「バショウ」(ムサ・バショウ)
-Musa basjoo-

   バショウ科・ムサ(バショウ)属

 中国原産
シーボルトが学名の名付け親ということで有名です。
ジャパニーズバナナとも呼ばれますが、中国原産の、食用にならないミニバナナといった感じの植物です。
大きな葉は、風には弱く、すぐに裂けてしまいます。
その大きな葉の陰にひっそりと花が咲いています。 薄茶色の苞(ほう=葉の変形したもの)に包まれた大きなかたまりの中に、花が二列になって並んでいます。
外側の苞がぱらっと外れると、バナナのような形のものが、上向きになります。 それを何回も繰返し、花茎はどんどん伸びていきます。
このかたまりの中には、次の花がたくさん待機していることになります。

4枚目の花の拡大写真のように、オシベにはたくさんの花粉が出ているし、その花粉が、メシベの柱頭にくっついているようにも見えます。 花のあとには果実らしきものも並んで出来ています。
では、自家受粉して実ができているのでしょうか。

図鑑などでは、最初は、雌花ばかりがつき、先端に雄花がある、というような説明がなされることがあります。 しかし、この写真の花では両性花にしか見えません。
この点について、名古屋市緑化センターの田中さんから、教えを請うことができました。
見かけは両性花の形をとっていても、オシベの機能を持っていなければ雌花、花柱の下にある子房が発達していなければ雄花、というふうに定義すれば、 雌性先熟とも言える、のだそうです。

更に、その特性について、熱川バナナワニ園に問い合わせました。

「自家受粉はしません。」

次のような仕組みがあることを教えていただきました。

「バショウは、ランナーで増える植物。日本国内では、それを増やしているので、周りにあるどの固体も全部同一の遺伝子を持ったクローン。 クローン同士を掛け合わせても、果実は出来ない。 つまり、花の下にある子房は、ある程度膨らんで、ミニバナナの形になっても、それは結実ではなく、しばらくすると全部ぽろぽろ落ちてしまう。」 とのことでした。

確かに、うちの近くでも、バショウを育てている家がありますが、首を長く伸ばした花序を見る事があっても、鈴なりのバナナ状の果実は見かけません。

原産地を突き止めて、まったく別のクローンを持ってきて掛け合わせれば、結実する可能性はあるのだとか。
原産地を突き止めて・・・というのは、図鑑などには、たいていは中国南部原産、ということになっていますが、日本で、寒くなってから開花するという 状況から見て、「原産地は、中国北部、あるいは他にあるのではないか・・」というのが、担当者のご意見でした。

ということで、まだ、バショウのタネを見たことのある人は、少ないようなのでした。

ちなみに、日本の路地植えでバナナを見かけたら、育つための気温が違うので、殆どがバショウ。
花を包んでいる苞の色が、バナナは紫色、バショウは黄色っぽい茶色、で見分けます。

これとよく似た「トラフバショウ」が、水生植物室でたまに見ることが出来ます。

追記
 2008年の12月、熱川バナナワニ園の会報に、次のようなバショウの記事がありました。
1992年の東京農大の資料として、日本国内でバショウの植栽のある農業高校にアンケートを試みたところ、花が見られたのは、 植栽のある学校の5分の1、種子まで確認できたのは更にその10分の1、という結果があるそうです。
日本での結実は皆無ではなかったということです。
更に興味深いのは、これまで、さまざまな資料には、食用に適さないとされていたバショウは、追熟することによって甘くなることが確認できたそうです。 この報告は、08年新宿御苑のバショウが結実し、種子も出来ていたことを受けて、上記の清水氏が果実や種子を確認後、試食結果を報告されたものです。
(名古屋市立東山植物園・多肉植物室裏の中庭)

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