「ヤスミヌム・レックス」
 -Jasminum rex-


モクセイ科・ソケイ属

タイ原産
    ソケイ属の中では最も大きな花です。つる性で、サンギャラリーの天井付近で、白い花をびっしり咲かせるとなかなか圧巻ですが、 ジャスミンの名前を由来にしている割には、ほとんど香りがありません。

07年12月、散り始めた花柄を拾って見ているうちに、面白いことに気がつきました。    

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    筒型の花はたくさんありますが、その筒型は、萼の間から、円筒状に伸びてきて先端を開花させますね。
ところが、この花に限っては、筒の部分が扁平です。扁平でありながら更に中央はくびれていて、その両側に、ストロー状の通路 のような空間があります。
開いてみると、雌シベが一本雄シベが二本です。その位置関係はとても微妙で、雄シベ二本に鋏まれた雌シベは、幅の狭いほうの空間に 納まっているのです。だから、その両側に、細い空間が出来ています。 この空間は何を意味しているのでしょう。アリのような小さな虫の侵入を期待しているのか、ストロー状に長くすることで、口吻の長い蝶類を誘っているのか。
植物は、人間の知らないところで、何をたくらんでいるのでしょう。

後日、写真では分からない部分を、植物に詳しいkeikiさんが図解してくださいました。ご本人了解の上で、ご紹介させていただきます。
図説、クリックで拡大
   花冠筒部の断面が、円形ではなく楕円形(扁平)なのは何故か。
本種は、花に香りがなく、芳香を持つ種が多いJasminumでは珍しい。
虫媒花であるが、香りではなく、白く目立つ花と、花の奥にある蜜で虫を呼ぶ、と考えられる。
媒介する虫は、おそらく、チョウやガの仲間で長い口吻を持つ虫で、その口吻を使って、花冠筒部の底にある蜜を吸い取ると考えられる。
その時に、口吻に確実に花粉をつけるためには、筒部が扁平で、狭い部分に二個の雄シベをつけ、長い部分の空洞に向かって、葯が裂開して花粉を出す方が効率がよく、 空洞に出入りする口吻に花粉がつく。本種はこのように進化したのではないか、と考えます。

花と虫の共生、お互いのために進化させてきたのですね。   

(名古屋市立東山植物園・サンギャラリー)

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