「イランイランノキ」
(カナンガ・オドラタ)
−Cananga odorata−

バンレイシ科・カナンガ属

熱帯アジア、オーストラリア。
    この植物の学名の種小名の 「odorata」は、芳香のあるとか香りのいい、という意味で、この花を蒸留すると 香水の原料になります。
かの有名な「NO 5」にも入っているとか・・・

しかし、直接鼻を近づけると、あまりいい香りじゃないのです。 花弁が黄ばんでくる、つまり成熟が進むと、ということなのです。

三枚目の写真は、普通は垂れ下がって咲いてる花を、ひっくり返したものです。

シベの部分をもう少し大きくしてみると↓、面白いメシベの柱頭が分かります。緑色です。
でも、この写真ではオシベはどこ?ですよね。
雌性先熟で、後からオシベの機能が発達するようなのですが・・・ボランティア時間帯では、まだ確認することが出来ていません。
剣山状のものが多分オシベ・・・と思えるのですが、この花、ぶら下がって咲くところがポイントですね。
うつむいた時、ジョウゴ型で花粉がさらさらこぼれ落ちては作り損。 どんな風に花粉をだすのか、ポリネーターは誰なのか。謎がなぞを呼びます。
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この花を育てていらっしゃるcatsさんが、ご自分のイランイランノキの花を、二つに切った写真を送ってくださいました。
花粉はどこに・・・・?葯の部分が見当たりませんね。 オシベの周りだけ、花弁が茶色く変色しているのが分かりますが・・・
うーん、ますます不思議な花です。
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  後日、植物に詳しいkeikiさんに、3枚目の写真を図解しての推論をいただきましたので、参考のために、ご紹介しようと思います。(ご本人の了解済み)

  イランイランノキの花は、ツボミが開いて花弁が展開してからも成長を続け、成長が止まった時点でもまだ香りは弱く、 黄緑色の花弁が黄色になる頃にやっと香りがよくなります。
これは、イランイランノキが原始的な植物だから、と考えられます。
バンレイシ科はモクレン科に近縁で、花の各部分は、おそらく葉序と同じように螺旋性のような気がします。
花は枝と同じで、花を構成する各部分(萼(がく)・花弁・雄シベ・雌シベ)は、元は葉であり、一つの花は一本の枝とも言えます。
イランイランノキの花が、開花後も成長を続けるのは、原始的なために、花なのに枝としての性質が残っていて、開花してからも成長し、 成長が終わった時点でやっと本来の花としての機能を発揮する、と考えられます。
花弁が黄色くなった時点で、香りも強くなり、雌シベも雄シベもその働きをすると考えられます。
花は、モクレン類と同じ雌シベ先熟と考えられ、雄シベは雌シベの授粉が終了後、花粉を出すと想像されます。
イランイランノキの花は虫媒花ですから、花粉は粘性があり、下向きの花でも、花粉が落花することはないと思います。
下向きの花には、受粉(雌シベの柱頭に花粉が付着した状態)した花粉が、受精前に雨で流されることを防ぐ効果があると考えられます。
イランイランノキの花は、基本的には、萼片が3個、花弁が6個ですが、オシベが弁化して、花弁が7個以上になることもあるようです。
これは、モクレン科におけるシデコブシとよく似ています。 写真では、オシベが弁化しかかっているものも見受けられます。

イランイランノキの花は、中心部に複数のメシベが集まり、その周りを多数のオシベが密集しており、外側からは、メシベの柱頭とそれを 取り囲むようにたくさんのオシベの先端部しか見えず、葯はその下にあって、時期が来ると裂開して花粉を出すようです。
オシベが密集しているために、花粉は下から湧き上がるようにしてオシベの上に出てくるような気がします。
訪花昆虫は、花の香りで集まり、花弁の基部の着色部(茶色部分)に誘導されて、体に花粉をつけると考えられます。
モクレン科に近いとすれば、イランイランノキの花は、一日で性が入れ替わるような気がします。
まず、メシベが花粉を待ち受け、次の日はオシベの葯が裂開して花粉を出す、と考えられます。

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以上です。 いかがでしょう。異論もあるかも知れませんが、知っておきたいことがたくさん書かれていると思います。

(名古屋市立東山植物園・サンギャラリー鉢植え)

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